職人は荒野をゆく

いつもお世話になっている、佐藤左官工業所の佐藤ひろゆきさんがお話をなさるので、まちづくりセンターへ。
町家をトーク(←ん?改修話だったっけ)というシリーズです。各回、職人さんが一人ずつおしゃべりするというプログラムで、もう数年続いてます。継続してはることに頭が下ります。


お盆前で、雨という悪条件もあり、15人程度の参加者でした。左官の名称や土壁の歴史、立て板に水のごとくなおしゃべりだわー。「口で壁を塗る」と言われていた父親の嘉一郎さんを凌駕されつつあります。


技術的なことは別所でまとめる予定なので置いといて、彼の姿勢が素晴らしいので書いておきます。
現在、仕事の減少で、伝統的な土壁やらをできる人がどんどん少なくなっています。佐藤さんとこは、京都の迎賓館、俵屋旅館、最近では羽田空港の江戸小路も手がけられた、たぶん、伝統的な仕事では日本一の左官屋さんです(N吉は、以前住んだ町家の壁を塗っていただきました。建築史のN氏にいつも「家はボロなのにここだけ文化財」といじられていた。今の家はどの壁も申し分ない土壁で、お願いできず)。


そんな佐藤さんだから天狗になることだってありそうなのに、「人間国宝なんてなったらだめだ」って言わはる。仕事が少ないからこそ、技術は囲い込まずに広げていかないと、そして広げて競争が起きることによってこそ、技術の継承と発展が担保されるんだ、という信念をお持ちです。自らを伝道師と位置づけてはるのです。最近は同業者から見積もりを頼まれたり、現場を見てくれと頼まれたりすることも多いそうですが、嫌な顔ひとつせず、走り回ってはります。
だから、みんながついてくる。