「杉浦非水」展と「ヴァン クリーフ&アーペル」展

杉浦非水(1876~1965)は日本画を学んだ後、図案家となり、1908年に入社後は三越広告で優れた表現を連発し、企業イメージを確固たるものにした立役者です。
名前といくつかのポスターなどは知っていましたが、京都で初の単独展。家族で細見美術館に出かけてきました。細見は狭いし外にすぐ出られるので、子供もまあ集中力がもつかなあと。
子供は早々に飽きてしまいましたがw、私は楽しめました。
日本画の基本は修めつつ、でもその後の展開がすごいっ!くっきりした構図のわかりやすさ、印刷の版を考えた図の簡素化、色調などなど、引き出しの多さに圧倒されます。近代の図案家というと神坂雪佳の名を思い出すのですが、雪佳が線の図案家だとすると、非水は面の図案家だと思う(もちろん線からなる図案や絵もすばらしい)。印刷、という工程を踏まえて描いているのがよくわかるのです。
旅のスケッチや、ミュシャギリシャ神話を下敷きにしつつ独自の表現に仕上げた1917年の南満州鉄道ポスター(ただ、構図は後世のものより甘い気がする)などなど振り幅いろいろ見えて、飽きません。レトロ印刷、近代の絵画表現にご興味のある方にはたまらんと思います。6/11まで。

「ヴァン クリーフ&アーペル」は、アルハンブラネックレスで有名な宝飾メーカー。
一生ハイジュエリーには縁がないけど、工芸的なものには惹かれてやまないので足を運びました。
宝石って、爪や枠で石を固定しますやん?あれって、石を小さく見せて残念やなあと前から思っていたのですが、ここんちは「ミステリーセッティング」という技術で1933年に特許をとってるそうな。表面に金具を出さず、ただ宝石だけで面を作るという技術です!
http://www.vancleefarpels.com/jp/ja/la-maison/spirit-of-creation/innovation/the-mystery-set.html
会場途中にある、各工程の職人が語る3分ずつの映像がすんごくよかった。
デザイン画を書く人、モックアップを作る人、石を選別する人、石を加工する人などなど、職人技と単純にくくってはいけない、各自の日々をおろそかにしない姿勢に、自らの背筋も伸びるというもんです。
二次元の絵から、どうやって三次元になっていくんだろう。各担当が少しずつ工夫をしつつひとつの作品ができていくだろう様子は伺えるのですが、各仕事の連携というか、コミュニケーションはどんなんだろうともっと知りたくなる。ワクワクが止まらん。

会場設計は建築家の藤本壮介。アクセサリーの展示ってトルソーに飾ってあったりすることが多く、「工芸ってんなら、後ろの留め金とか裏の処理も大事やろ~」とかねてから思っていましたが、工夫して後ろ(裏)からも見られるように、そして会場自体が神秘的空間になってるのはとてもよかったです。レクチャーもありましたが行けずに残念。
8/6まで。