@RT←BOILD・堀内誠一・コーラス×iedit・幸田文

名古屋で仕入れた@RT←BOILD(アートボイルド)(←編集室さん)vol.2
このフリペすごくいい! 開いてすぐに美術館のチケットプレゼントで「行きたい館を知らせてください。館と交渉します」って。一瞬ちゃらけたようでいて、ニーズをきちんと館に伝えることができる素晴らしい機会を作り出してる。
他の記事も、日本庭園で見立てのことを考えてみたり、学芸員さんによる自館紹介があったり(ヨソイキ記事ばかりじゃなくて体温が伝わる)、巻末にはあいちトリエンナーレの見方を書いてたり、もちろんアートスケジュールも。
ともすると評論家さんのお堅い文章が踊り、読み応えはあるのだけれど敷居高く感じがちなこういう冊子にあって、本誌は徹頭徹尾、一般の人向けに書かれてる。トリエンナーレの記事も、最後に「どう考えても理解できない、楽しめなかった」人向けに「会期終了後の心配」をしてみよう、とか、悪趣味に陥らないはずし方が楽しい。
ん〜、毎号読みたいなあ。


堀内誠一『旅と絵本とデザインと』
堀内誠一 旅と絵本とデザインと (コロナ・ブックス)
伊丹市立美術館で購入。図録でなく本を作る戦略、N吉は大歓迎です。あ、大きな作品のある画家やらの展覧会では大判の裏写りしない紙による重たい図録でいいと思いますが、この展覧会では、色さえきちっと再現されてるならごちゃっと色々詰め込んでかつ手軽に扱えるA5判のこの薄い本がうれしい。ありありと、展示を思い出すことができます。だからこそ、展示を見ないでこの本を読むのはもったいないかも。


コーラス×iedit(←プレスリリースらしき)
少女マンガとカタログが一冊に!って新しい試みだったので発売日に買ってみてしまいましたん。ファッションに特化した漫画、一部は後半のカタログに載ってる服を漫画の主人公が着てるって作りで、それはそれでおもしろいとは思ったけど……服は買わないな。
フェリシモって一度頼むと半年くらい、色違いや柄違いのほぼ同じようなシルエットの服が毎月洋服が届くみたい。安いったら安いけど、そんな同じテイストばかりの服、5、6着もいる?コーディネートは自分でしたい&色んな味のものをちょっとずつ食べたい飽き性のN吉には、このシステムが理解できません。しかも通販だから試着もできんし。ってことで、カタログ部分はパーラパラ、でした。
少女マンガは久しぶりに読んだので楽しかったが、書下ろしとそうじゃないのの違いが、読み込んでないのでようわからん。初出か再掲かってのはかなり大事なんで、わかるように大書きしてほしかったれす。
主人公が着てる服を買いたい!って欲望を喚起するには、ある程度の連載で主人公がおしゃれという認識が読者内に広まってないとダメなんじゃなかろうか。もしくは本人がお洒落という作家さんの作品を入れるとか(今号では西村しのぶがそうなのかな)。しかもそれをあざとくなくやるのは難しそう。
ところでN吉がお洋服についてリスペクトしてた漫画は安積棍子『お洒落小僧は花マルッ』シリーズ(←やっぱアーカイブ頁は貴重)と成田美奈子『CIPHER』。前者はお洒落好きな中2が12歳離れたデザイナー(←ちなみにガラスの仮面は11歳差らしい)に惚れて突撃して結婚までという物語。今でいうとゴスロリつーかレースやらが過剰な洋服&人物造形・恋愛話にはイマイチ入れ込めなかったけれど、彼女が彼のハートを掴む(←死語)一言、「自分だけの一着なんて最高のぜいたく!」(←記憶によるので細部違うかも)ってとこには「!」だった。当時はお針子母マルヨの服はださいよ、なんて既製服志向だったのですが、この台詞で目が覚めたというか、そうか、自分は世界で一着しかない服を着させてもらってるんだ、と認識を新たにしてもらった作品。
後者は、NYの高校に通うヒロインのコーディネートがなんてことないのにお洒落で、しかも、作品の中で洋服を着回していたのに気づき、絵を書き出してた。同じシャツを、ある日はアウターっぽく着たり、ある日は裾をしばって着てみたり。漫画家さんってこんなとこまで考えてはるんや!って目鱗でありました。


おとうと
出だしの文章が素晴らしくて、しばし酔った。が、が、が……。文筆家の父、おとんぼな弟、しっかりものの語り手姉、姉弟とは血のつながらない後妻である母による数年を描いたこの作品、放蕩弟が肺病になり、けなげに世話やらを取り仕切る姉自身の描写、心情など細やかで本当に上手だと思うのだけれど、なんでそんなにつらくてみじめなん……とただただ悲しくなってしまった。彼女自身の幸せは、いったいどこにあるんやろ、と絶望してしまうんですわ。でも、当時は、こうやってすべてを家族のために捧げた存在が共感を呼ぶくらい、肺病もちの家族が多かったんでしょか。文体練習目的ならぜひ読んでみてください。
相方蔵書(おとんぼな弟、という共通項で読んだんやろか)。どうもありがお。