@RT BOILD/宮尾登美子/パンほんひと+地図/レベッカ・ソルニット

『@RT BOILD』
感想(←かこかみん)を書いたら、編集長の塩見さんが見つけてくださって新号送付いただく。ありがとうございます!こゆご関係ってうれし。
目を引く表紙は、伏見稲荷?カラーの発色がよくて、お上手な印刷所さんを使ってはるんですね。紙のチョイスもよいのかも。
展覧会や映画や舞台などの情報誌を目指してはるわけではなく、それらをもっと身近にっていう心意気やよし!例えば「最後の晩餐」図が時代と共に変遷してゆくという項では細やかな注があって、勉強になります。
お送りいただいた数部は、まずは周りに配りましたよん。


『錦』
女の生き様を描いて定評ある作者の2008年作品を、お師匠I氏からお借りする。ありゃ、主人公は男性?、意外。
龍村織物といえば、近代建築の内装にも使われたという話を聞いておりますが、本作ではその記述はなく、一代にして帯地から正倉院の宝物の復原までを依頼されるようになった当主と、彼のぼてふり時代から支え続けたお仙という側用人を中心に、時代と文化が描かれる。
宮尾作品は、頑迷なまでに己の道を進む主人公が、時を経て世に受け入れられるという展開が多い。本作もその構造ですが、特徴的な「織り」についての描写はさほどなく、限界や制限があったんかなあ、と感じました。
華美な材料ではないけどこれぞ、な装丁は菊池信義氏でした。さすがに素晴らしい。


『パンほんひと+地図』
発酵者の林舞さんはこの号を最後に九州へ戻られるらしい。さびし〜。N吉はたまたま、BOOKMARKNAGOYAで彼女のトークを聞いたもので、残念気分はひとしおです。こないだ朝日新聞にも載ってはりましたよね。表現したいという情熱とセンスとお人柄が、結実した稀有なフリペ「ぱんとたまねぎ」。その活動は、単なる彼女の自己表現に留まらず、お店や電車や町に染み出して、たくさんの人を動かし、時と場所をも作っていってる。その表現力と活動に尊敬の念を抱きます。九州版も期待。


『災害ユートピア』(←やはり神戸方面でよく売れるのだろうか)
バルのジュンクで購入。帯の小さい文字「なぜその“楽園”が日常に生かされることはないのか?」ってところに飛びついたものの残念ながらその回答はイマイチおぼろげに思えました。読解力なしお。
とはいえ、なかなかに読み応えあり、いっぱい付箋を張りました。災害が起きたとき、普通の人が助け合う。利他的な活動を進んで、喜んで行う。むしろ、秩序が崩壊することを恐れる体制側やマスコミが混乱を引き起こすといった指摘が興味深い。
こういったユートピアの出現については「困ったときはお互い様」な日本では、それほど驚くべきことではないような気がしましたが、本書は翻訳本なので、多様な人種や格差が当然な社会ではその楽園の尊さもより際立って見えるということなのかもしれない。
人々がユートピアでの経験やそこで学んだ技術を生かして、社会を変革すべく立ち上がっていく巻末部分は希望にあふれている。阪神大震災とその後の日本を重ねながら読みました。
←関係ない写真。雪原でもへっちゃら!