REAR/アラタクールハンド/衿沢世衣子/池田弥三郎

REAR no.7映像の<場>を創る
あいちトリエンナーレの折に購入した芸術系プチプレスようやく読みました。密度濃くて面白かった。シネコン隆盛で実験作を上映できる場が減っているという状況から立ち上がった企画だと思いますが、今後の話より、過去の実験作がどう上映されてきたか、な振り返りの稿がエキサイティングでわくわくした。限られた場所でしか見られなかったから熱気があったとも言える。誰でもどこでも映像が見れる今、いっしょに見る場はやっぱtwitterになるのかなあ。
名古屋という場でしか書けない稿が詰まっていて、住んでいたらこれは毎号読みたい。


FLAT HOUSE style(←経緯などこちらに詳し)
昨年FLAT HOUSE LIFEがでて、一過性のものに終わらすまじとおもわはった関係者の方たちによる雑誌創刊です。出版とは運動でもある。ざらっとした手触りの写真群が素敵。
駐在米軍人が住んだ平屋住宅が時を経て、価値をもちはじめたってところがおもしろい。例えば近代建築のように、お金をたんまりかけて贅沢だ!ってところが評価されてるんじゃなく、異なる住文化が忘れられて残って、今、評価されている感じなのかな。平屋や外部空間の豊かさに目を向けているところは、都市ならでは(実際に都市かどうかはともかくとして)。でも二階建てもいいですよー。涼しい1階、ぬくい2階、季節によって寝る場所も変えている町家住まいからすると。


ちづかマップ
朝日新聞書評で気になってて百年で購入。尋ね人探偵をする祖父の元で女子高生とその友人達が繰り広げる一話完結の物語。絵も物語もとびきりうまい!とは思いませんでしたが、取り上げているその視線が好き。古地図や筆跡、修悦体(←やっぱり、こんなに時間をかけてはるんや!とわかって動画に敬礼)まで、誰かが生きていた証みたいなものに作者は興味があるんじゃなかろうか。こうやって、先人の痕跡を辿り、自分の養分にしていく楽しさって言葉には出来にくいのに上手に表現してはると思いました。


私の食物誌(←そのうちの一稿に触れたぺえじ。なるほど)
善行堂出品のこのはな文庫で購入。書名をもう一ひねりしてたらもっと売れた気がするのは大きなお世話ですよね、はい、すんません。
銀座の天金という天麩羅屋のぼんで、慶応に進んだ折口信夫の教え子国文学者による365日の食エッセイ。食いしん坊N吉、ついつい食随筆的なものを読んでしまうわけですが、これほど地と時を限られた字数でうまく書いてはるのは初めてな気がする。さすが揚げ物屋子息らしく、朝食からテキといった豪胆な稿、鮮度よき魚のおいしさについての稿が楽しい。清潔にうるさい家族のお話にもウンウン。でも先生、蟹も旨いですよう〜とお伝えしたくなるなあ。ともかく袖珍な一冊。おススメ。