星新一・高橋義雄・高峰秀子

父・明治・アメリカ(←丁寧に紹介してはります)
ショートショートの名手、星新一による父の前半生記。
おもしろかったあ。維新後、努力して色々な人の知己を得、アメリカにわたって青雲の志をもって出版経営等にあたるもいつもピーピーで、でも日本人が来米するたびに声がかかってまた世界を広げていくという、読んでてわくわくし、そして生きる姿勢はかくありたい、と思う真面目さが伝わる伝記です。


箒のあと(上)
書名だけ知っていた、明治時代の実業家で茶人の高橋義雄(箒庵)(←wikiです)による自伝。
水戸藩出身で、苦学して福沢諭吉門下にて弁舌と記事執筆能力を磨き、それでは飽き足らず洋行して経済や美術を実践的に学び、帰国後は井上馨に重用され、左前だった三井家に入って建て直しの一翼を担った人物です。と同時に趣味人でもあり、益田孝男(鈍翁)やらとの茶交流、歌舞音曲の精進と評価など、よくぞそんなに活動されましたな、な充実っぷりです。しかも、お勤めは20数年、51歳で早隠居。さばさば。
元記者ならではのリズムよき文章、そして綺羅星のごとき当時の財界人との交流が、苦労や悪口はほとんどなく描写されるのは素晴らしい。
金箔押しのハードカバーをS氏が貸してくださいました。おおきに。上記の本と並行して読んだので、日夜明治にタイムスリップしてたような毎日でした。それにしても、上巻で500頁強、しかも旧字なので読むのに時間がかかり、自分の教養のなさを呪うなり。下巻へゴウです。


コットンが好き(←なんか、オビ文がヤダ)
骨董の目利きとしても知られた女優、高峰秀子。彼女のことはフルムーンCMでしか見たことがありませんが、子役から活躍してらした方なのですね。
骨董に限らず、日々の暮らしの中で大切にしている品を彼女が紹介する一冊です。カラー写真による道具たちの数々は、芸術品じゃなくてちゃんと使われている形跡があるのに、どこか気高く美しい。たしかに目利きさんだわ〜。そんな目利きっぷりをひけらかすことなく、映画監督の夫との、(貞淑+従順)×2に思えて仕方ないのにでも楽しそうな日々や、海外での置き引きやまずいご飯体験などダメダメっぽいところをさらけ出しているのに微笑がわく。
ところで、愛嬌と品が同居しているこの文体、どこかで読んだことある……と思ったら、そうだ、orochon様の文体に似てるんだ!と気づいた。