とよとよ読書

にっぽんの漁師
恵文社で購入。聞書達人の塩野せんせによる、日本を掘り起こす一冊です。北海道から沖縄まで、13人の漁師に話を聞く。いずれも激動の時代を生きてきた猛者ぞろい。全体をなべて読むと、あとがきにあるように、技術が発達して乱獲が日常になり、子供が継げないという職と海のこれからを憂う内容です。気持ちは重くなるけれど、だからこそ、この本がでた意義があるのだと思いたい。問題を共有することが、次への一歩へつながらないかな。なんて外野の希望的観測ばっかかもしれませんが、マグロの一本釣りの話とホタテ漁の話は、自然が相手という漁師仕事の醍醐味を感じさせた。

空の食欲魔人
最近すごさがわかった川原せんせの単行本。オヨヨ書林さんで購入。あ、あれ〜?なんか、あんまり響かなんだ。腰落ち着けて読んでないからじゃろか。ちょっと変わった女の子が、素敵な男性と出会ったり、幸せになったり、という短編集。どんなに変わった人間と言われようと、きちんと自分の足で立ってる私だよ!という自己肯定感あふるる人物造形は好きです。

ゴウ
わしも老いたもんよ……と感じた青春小説。元ボクサーの父をもつ在日の高校生が、謎めいた美少女に惚れられたり、親友の死に直面したり、童貞喪失直前に出自を告って恋を失ったり、親父と対決してボコられたりと、何が新しいのか全然わからん。散りばめられた映画や文学、音楽なんかのスタンダードに初めて触れてわくわくドキドキ、な世代だったらきっとおもしろかろう、というお話でした。

加賀日和14号
地元の方たちが作ってはる雑誌。この薄さで650円は高いよ!と思いますが、心意気に投げ銭です。加賀に息づく文化を、表現する雑誌です。例えば加賀の人がよそへいくときに、この雑誌をお土産にもっていく、そんな使い方が全国の地元雑誌界隈でなされていけば楽しいな、なんて夢想しました。被写体深度の浅い表紙写真は、ステンレスの匙かと思ったら、漆塗りでした!すごっ。これを作った佐竹清光さんという方の言葉がまた。「この背高椀汁は何十年も前から作っているけれど毎年きちんと売れる。古くならない。それは、この椀が用の道具としてちゃんと認められているからなんだろうね」p08

←関係ない写真。どういう設計でこんな形が!